代官山のカフェでおもしろい飲み物に出会った。その名も「コーヒーの実のお茶」。
コーヒーの……お、お、お茶……!?

興味津々で頼んでみたら、さっぱりすっきり、香りは紅茶に近くて、ほのかにフルーティー。ベリーっぽさも感じる!
いわゆるコーヒーとは全然別物!たしかにお茶で、びっくりしてしまった。
「コーヒーの実のお茶」の正体
メニューの英訳は「Coffee Husk Tea」。

Husk(ハスク)はざっくりいうと「殻」や「外皮」のこと。
いわゆるコーヒー豆は、コーヒーノキの果実(コーヒーチェリー)の中にある種子(コーヒービーン)。
果実から種子を取り出した残りの部分、つまり皮や果肉が「コーヒーハスク」にあたる。このハスクを乾燥させて煮出したものが、「コーヒーの実のお茶(Coffee Husk Tea)」の正体だったのだ。
(コーヒーハスク)=(コーヒーチェリー)ー(コーヒー豆) ってことね!
コーヒーの流通量から想像に難くないが、コーヒーを製造するにあたりコーヒーハスクは大量に発生するものらしい。コーヒーハスクのお茶以外にも、コーヒーハスクを活用する活動も広まっているそうで、コーヒーハスクを利用した「カップ」などもつくられているという。
ハスクとは一体?
「コーヒーの実のお茶」と出会って、Husk(ハスク)という言葉を初めて知った。辞書も引いてみた。
husk【名詞】
①(穀物・果実・種子などの)殻、外皮
②(一般的に)価値のない外側の部分、かす、抜け殻
③やる気をなくした人
『ウィズダム英和・和英辞典 2』
なるほど〜、なんとなく役目を終えた感じの、外側の包みって感じだ。……②とか③の意味への展開、ハスクへの捉え方が露骨に表れていておもしろい。
抽象が得意な英語と具体が得意な日本語
コーヒーの実以外にも、ハスクはあるらしい。豆でいうとサヤ、米でいうと籾殻、玉ねぎの茶色い皮や、ココナッツの硬い殻、とうもろこしの葉も、ハスクにあたるという。
Husk(ハスク) = サヤ、籾殻、皮、殻、葉……
英語の「Husk(ハスク)」は「何かを包んでいる、価値のない外皮」という抽象的な概念を示す一方、日本語は「何の、どの部分か」で細かく表現が分かれている。英語では「Husk(ハスク)」とたった一言で括られる言葉が、日本語ではそれぞれに名前がついている!おもしろい……!日本語では兄や弟とはっきり区別するけれど、英語ではbrotherと一言で表現するのと同じ構造だ。
一言で表せる英語はすごいなあ、抽象化が得意な言語なんだな〜、さすが……!と思ったが、考えるうちにそうでもない気がしてきた。ひょっとしたら「MOTTAINAI」の生まれた国NIPPONマインドでは、ハスクというような、一言で括った途端にゴミになりうる言葉に抵抗があったのかもしれない。
「抽象する」という包括的な視点もすごいけど、「個別に捉える」という細やかさも同じくらいすごい。区別するということは、それぞれの違いが重要である・意識的に取り扱う必要があった、ということだから。
サヤ、籾殻、皮、殻、葉。「Husk(ハスク)」をそれぞれを個別に捉えることから、新しい展開は生まれてくるのかもしれない。
日本語は、コーヒーハスクになんという名前を与えるのだろう?

イエメン産のモカコーヒーがメインのカフェ。コーヒーの実のお茶も、中東風のスパイスを使ったケーキも、美味でした