お茶とは何か。
緑茶、抹茶、ほうじ茶、烏龍茶、紅茶。これらは間違いなく「お茶」である。チャノキの葉や芽、茎を加工した飲み物の「お茶」はわかりやすい。
チャノキと関係のない「お茶」もたくさんある。麦茶、黒豆茶、とうもろこし茶、ハーブティー類。コンビニで堂々とお茶売り場に並んでいるからだろうか、これらはスッと「お茶」だと受け入れられる。
昆布茶あたりから不安になってくる。昆布出汁との違いを説明する自信はない。
柚子茶もグラグラする。砂糖やはちみつに漬け込んだ柚子をお湯で割ったものがお茶と呼ばれる不思議。桜の塩漬けにお湯を注いで飲む桜茶も謎だ。名前に「茶」がついているから、やはり「お茶」なのだろうか。
何かにお湯を入れたり、煮出す(=煎じる)と、それは「お茶」なのだろうか。
ということは、カルピスのお湯割は「カルピス茶」で、爪の垢を煎じたものは「爪の垢茶」なのだろうか?
①飲み物であるという慣習的表現
先に挙げた、チャノキ以外から作られるお茶と呼ばれている飲料を「茶外茶」と呼ぶとらしい。
麦茶、黒豆茶、とうもろこし茶……これらは、チャノキを原料としない、まさに「外の茶」である。
Wikipediaによると、チャノキから作られた茶は古より飲まれてきた歴史を持つため、茶葉を用いない飲料にも「茶」と名づけることで「飲料である」というイメージを与えたという説もあるらしい。
たしかに「茶」とつくと自然と「飲み物」として認識できる。「〇〇茶」の〇〇の部分が未知のものだとしても、飲み物だとわかる。エント茶(アイヌ)とか、オミジャ茶(韓国)とか。
「茶」と付けることで「飲み物ですよ〜」というサインになる。なるほど、「ちゃ」は語感も良いし、便利な目印言葉として機能したのだろう。
お茶とは、飲み物である。
飲み物は、お茶と呼ばれうる。
もし後者が成り立つのであれば、スープや粥といった飲むように食べるものも、広い意味ではお茶に括られる可能性があるのかもしれない。
②お茶的な役割という機能的表現
「お茶しない?」と誘われて、一緒にカフェに入り、コーヒーを頼む。これも「お茶」と呼ぶ。
この考えでは、あらゆる飲み物がお茶になりうる。コーヒー、コーラ、クリームソーダ。先のカルピスのお湯割も、お茶と括られるかもしれない。お茶的な役割を果たすものを、お茶と呼ぶことがある。
ただし、いきなり「コーラはお茶ですか?」と問われたら、多くの人がNOと答えるだろう。
それは、「お茶のような場」にコーラが現れることはあっても、コーラ自体から「お茶」が見出されるわけではないからだ。矢印は一方通行、お茶という言葉からさまざまな飲み物が導き出されることはあるが、各飲み物からお茶が導かれるとは限らない。
③植物の抽出液という物理的定義
最も判別のしやすそうなお茶の定義は「植物の抽出液」というものだ。
チャノキから生まれる王道のお茶類は、もちろん植物の抽出液である。麦茶や黒豆茶も、原料は麦であり黒豆であるから、この定義では間違いなくお茶である。花を乾燥させてお茶とするカモミールティーもお茶であり、桜の風味を楽しむ桜茶もお茶であると言えそうだ。
植物の抽出液=お茶でない例
納得感もあるが、植物の抽出液=お茶とは言えない例もある。
たとえば、バラの香水は、まさに植物の抽出液である。ハーブ類の入浴剤を入れたお風呂も、植物の抽出液と言えるかもしれない。子どもの頃に花びらで作った「色水」も、草木染めの染料も。しかし、これらはお茶ではない。
「飲用の植物の抽出液」と、細かな指示が入ってやっといい感じになってくる。
植物以外の抽出液=お茶の例
では、飲用の抽出液で「お茶」と呼ぶが、材料が「植物以外」のものはないのだろうか?それが、あるのだ!
漢方の世界では「石膏」が使われる(鉱物!)。石膏を煎じてエキスを煮出したものを石膏茶と呼ぶという。「牡蠣の殻」や「セミの抜け殻」もお茶にする、らしい。
「飲用の植物などの抽出液」としたほうが、より精度が上がりそうだ。
お〜、この流れで考えたら、植物ではなくてもお茶になりうる……!つまり、爪の垢を煎じたものも「爪の垢茶」と言えるのかもしれない……!「爪の垢を煎じて飲む」のだから、「飲み物(飲用)」なわけだし……?
まとめ
以上を総合すると、「お茶」とは以下のように言うことができそうだ。
- 飲み物のこと
- お茶的な場で提供される飲料のこと
- 飲用の植物などの抽出液
はじめの問いに戻ると、柚子茶・桜茶・昆布茶は「お茶」である(→①・②・③)が、昆布出汁は「お茶」ではない(③ではあるが①ではない)。
カルピスのお湯割を「お茶」と呼びうることはあるし(→①・②)、爪の垢を煎じたものは「爪の垢茶」といえる(→①・③)だろう。
まだ検討したりないこともあるだろうが、今日の段階では自分としてはスッキリした。
長らく「お茶とはなんだろう?」と気になっていたので、この機会にじっくり検討できて、めっちゃたのしかったです!
