メルカリの野菜取引と食品事故リスク──野放しと規制のあいだで考える|雑記#0037

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生産者さんから直接野菜や果物を買える方法として、メルカリでの売買が一般化しつつある。

買い手にとっては、お安くて、新鮮で、いいこと尽くめ。生産者さんにとっても、手間ではあるものの、出荷するよりも取り分が大きくなることも多いと聞く。

仕組みとしてWin-Winである、メルカリ青果。これからも増えていくだろうと思う。

一方で、「いつか取り返しのつかない事件が起きるのではないか」とも感じる。

もくじ

食品事故はゼロにはできない

「取り返しのつかない事件」というのは、悪意に限ったものではない。

ちょっと考えたら「起きそう」というレベルの、食品事故である。ニラとスイセンの間違い、山菜・きのこ類の採集ミス、細菌付着の大量感染……食品の事故は必ず、どこかで、起きる。メルカリに限った話ではなく、完全にゼロにはできるものではない。だからこそ、流通には仕組みが設計され、ルールが敷かれている。

一般的な「おすそ分け」であれば、被害範囲はご近所さん圏内である。無人販売も、流通の範囲はある程度絞られる。

しかし、メルカリの世界では仕事のように大量の野菜を日本全国に発送している生産者さんが存在していて、万が一の影響の範囲が相当なものになっているケースも存在している。

ちゃんとした人たちのなかに、誰でも混ざれてしまう現実

レビューや取引数から、ほとんどの出品者さんはきちんとした方だろうと想像できる。一方で、ヤバイ人でも簡単に混ざり込める構造だよなとも、思う。

そもそも冷静に考えて、以下の条件で食べ物を買うのは&食べ物を売るのは、「アリ」なのだろうか。

  • 売り手の名前・住所は不明
  • 相手の説明が本当か確かめようがない
    → 農薬の有無・産地・保存状態等は全て自己申告、盗品の可能性もあり
  • 万が一の際に連絡ができない
    → 受け取り=取引完了の仕組みだから、例えば食べて問題があっても対応不可

ちょっとやっぱり、闇市すぎるというか、何かを「えいや!」と信じる思考停止を介さないと、踏み出せない一歩をわたしは感じてしまう。個人情報を明かして、根拠を示して、流通コストをかけて、責任を持って生産をしている「農家さん」が背負っているものとの差が、あまりにも大きすぎる。

価値を生かす、という方向性で

とはいえ、これだけのユーザーがやりとりをしている現実からもわかるように、既存の流通のシステムでは応えられない大きなニーズを、メルカリが拾っていることには間違いない。さまざまなリスクがあるにも関わらず、これだけの数の人がメリットを感じている価値が、確実にある。

お値打ちであること、新鮮であること、生産者の方に直接質問やリクエストができること。
量や内容の柔軟さ、個性のある野菜、買い物体験そのものの物語性。

すばらしい価値がある仕組みだからこそ、野放しにするのではなくて、価値を生かし持続させるやり方を設計できないものだろうか?

日本は規制の国だから、トラブルが起きたときに(正確にはトラブルが起きて大々的に報じられてムーブになったときに)、急に全てを「NO!」にする。犯人探しをして、企業の責任や、自己責任で片付けようとする。

野放しor規制の極端なやりかたではなくて、大きなトラブルが起きるに、なるべくトラブルが起きない持続可能な形をつくれないものだろうか?

かんたんにできそうなトラブル防止アイディア

たとえば、以下のような方法を設定するだけでも大きな抑止力になるように思う。

  • 生鮮食品カテゴリの商品出品&購入時に、リスク説明のポップアップ画面を表示、内容を確認しましたのチェックボックスを設定する
    → 洋服やおもちゃと同じノリでの出品・購入を減らす
  • 食品を販売できるのは「本人確認済バッジ(=身分証確認を済ませた印)」が付与されたアカウントだけ、とする
    → 安全性を高めつつ参入障壁が極端に上がらない
  • 食品の取引は「ショップ形態」にするか、出品数を月○件・全体の○%以下までなどとする
    → ビジネス的な規模と趣味出品の線引きができる、税制度と関連も容易

特に①や②は実装の難易度が超低い。ほんのちょっとのことでも「食品は特別」という態度をプラットフォーム側が示すことで、売り手にも買い手にも潜在リスクを周知することができる、よい方法だと思う!

まとめ:知恵を出し合う方向に!

価格高騰が進む昨今、さまざまな「仕組み」のそもそもが問われている。流通を挟むとコストが高くなるのには、設計された仕組みがあるからである。その仕組みを省いてモノを手にするということには、メリットもあれば、当然リスクも伴う。

メリットメリットメリット!と盲信することも、リスクリスクリスク!と規制することも、極端すぎる。そうではなくて、せっかくのいい仕組みのいいところを持続可能なものにするために、トラブル前にリスクを減らすという視点で、よりよい方法を模索できないものだろうか

わたしの案は、ジャストアイディアに過ぎない。農業のことも、プラットフォームのこともよくわかっていない、イチ生活者のアイディアでしかない。だからきっと、もっといい方法があるはずだ。

何らかの事故が起きてから大騒ぎをするのではなくて、事故が起きる前に「ちょっと危なくない?なにかいい方法がないかな」と、みんなで知恵を出し合う文化が根付いていくといい。そんな知恵とやさしさの文化が、じわじわ広がっていきますように。

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運営者情報

お粥研究家。24時間おかゆのことを考えている人。「食事でじぶんを整える」をテーマに、毎朝の自分の体調に合わせたおかゆを作っている。お粥を作るのも食べるのも見るのも大好き。

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