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社会の行列は減っていく──「なくすべき行列」と「残すべき行列」|雑記#0048

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行列のことを考えていたら、いろんなことが浮かんできた。

「行列を観光資源として活かせないだろうか?」とか、「行列に並ぶ人が持っている適性を、店舗開発の予定地に立って街を観察する、みたいな仕事に活かせないだろうか?」とか。行動経済学や公共哲学、UX設計、時間論、文化人類学、社会福祉……さまざまな領域に絡んでくる「行列」という現象に、どんどん興味が膨らんでいる。

今回は、すべての行列が“悪”なのではなくて、「なくすべき行列」と「残すべき行列」があるのでは?という話について、行列のこれからについて、考えてみる。

もくじ

減らすべき行列:目的達成のための障害物となる行列

目的を達成することへの障害物となる行列は、社会的に減らす努力をするべきだ。

トイレ、駅や役所の窓口、病院の受付……目的のために渋々並ぶしかない、並びたくて並んでいるわけじゃない行列がある。これらはどんどん減らして、社会全体の生産性を高めていけるとよい。

先に「病院の受付」と挙げたが、悩ましい例に出会ったことがある。

毎朝の開院前に「たむろ」が起きている現象だ。予約制ではない町の医院、整形外科などの継続的に通いがち医院でときどき見る。わたしも渋々並ぶことになったときに、「今日は〇〇さん来ないねえ〜調子悪いのかね?」という、冗談みたいなやりとりをしている年配の方がほんとうにいたから驚いた。

こういった患者さんにとって行列での待ち時間は井戸端会議の場で、たのしい時間なのかもしれない。しかし、それでもこの類の行列は減らしていくべきだと思う。なぜなら予約制にして行列が不要になったとしても、予約時間のずいぶん前に来て話し込むなり、時間ぴったりに行くなり、選択肢が残るからだ。

残すべき行列:体験の一部となる行列

ぜひ残していきたい行列もある。並んでいる間に、わくわくしたり、「あと何人目だろう」とそわそわするような、体験になる行列だ。

初詣の列、握手会の列、新規開店のオープン前の行列。フェスの入場列や、お祭りの屋台の行列。ひょっとしたらパチンコ屋の開店前の行列も体験的なものなのかもしれない。

初詣の列はハレの日の演出やご利益の増幅装置として、握手会の列は人気投票として、開店オープンの行列は景気付けとして機能する。フェスの行列は「うわあ〜あと○時間後にはいよいよ!」という気持ちを高めてくれる。お祭りの屋台の行列も、行列自体が祭りの一部としての機能を担っている。パチンコ屋の開店前の行列は、初詣の列に近いのかもしれない。並んだからには今日こそ当たるぞ!……という、験担ぎの機能があるのではないだろうか。

行列はサービスになっていく

基本的に、これからどんどん行列は減っていくと思う。

行列には見えないコストがかかっている。並んでいる人の時間だけでなく、行列を整理するための人手や、安全確保のルール設計、周囲に迷惑にならないように並ばせるスペース……特に都市では、人件費も土地の価値が上がっている。だからこそ、行列を減らす仕組みに投資する方が、合理的になっていく。

もしかしたら、行列をあえて残すことは「サービス」になっていくのかもしれない。

一方で、世の中の行列が全て消えるとしたら、それはそれで寂しくも思える。先の「体験の一部となる行列」や昨日考えた「行列は趣味」という視点では、行列はひとつの文化的な豊かさだし、大きなビジネスチャンスにも思えるのだ。

行列が選択制になるとよい

並ぶ・並ばないの両方が、残るといい。

残すべき行列としたものの中にも「あらゆる行列に並ばないで済むなら並びたくない」「行列に並ぶことが難しくて参加を諦めてしまっている」、そんな人も一定数存在する。足腰が弱ってしまった年配の方や、小さな子どもがいるご家庭は特に多いだろう。(行列耐性がなさすぎる、わたしのようなせっかち人間も多々諦めている!笑)

行列を完全になくすのではなく、並ばないでよいという選択肢も加えてみる考え方だ。

人混みに例えると分かりやすいのかもしれない。花火大会に有料観覧席が生まれたことで、花火大会へ行くことを諦めていた人が、「場所取りがいらないのなら行ける!」と、機会が生まれた面もあると思う。一方で、わいわいと人混みの中で見る花火の体験に、価値を見出している人いる。このような共存型は行列に対しても有効な視点だと思う。

野球の外野自由席と指定席、通常パスとファストパスのように、それぞれの楽しみ方が選択肢として残って行くと良い。

その日の気分、その人の体調、その人なりの生き方に合わせて、「並ぶ」か「並ばない」を選べる社会は、とても豊かだと思う。

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運営者情報

お粥研究家。24時間おかゆのことを考えている人。「食事でじぶんを整える」をテーマに、毎朝の自分の体調に合わせたおかゆを作っている。お粥を作るのも食べるのも見るのも大好き。

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