気力と体力が潤沢な、頑張り屋さんとの仕事は難しい。
ラクをする、という視点がないからだ。
私は爆発的な集中力がある代わりに、持続力がない。1日のうちで人間の姿で頑張れる時間が限られているから、とにかく段取りがキモになる。
気力と体力に恵まれた人たちのように、手に届くものから「とりあえずやってみる」選択をすると、地獄をみるのだ。
「怠慢・短気・傲慢」——プログラマの三大美徳。
IT業界の人なら一度は耳にしたことがある、有名な言葉だ。
有名なプログラミング言語を開発した天才の言葉で、「怠慢・短気・傲慢」のマインドこそ、優秀なプログラマにとって欠かせない素養だという。
怠惰だから、同じことを何度も繰り返したくない。
短気だから、めんどくさいことを避けようとする。
傲慢だから、自分の意見を持ち、きっちり仕事をする。
「怠慢・短気・傲慢」のマインドが、できるだけラクな方法で、円滑に、トラブルなく進められるかという視点をつくる。
逆はどうだろう?「勤勉・穏健・謙虚」マインド。
勤勉だから、同じことを何度でも繰り返せる。
穏健だから、めんどくさいことにも淡々と対処できる。
謙虚だから、いろんな人の意見を集めようとする。
……まさに、すばらしい人格者だ。
時間、予算、気力、体力……とにかく潤沢なリソースがあれば「勤勉・穏健・謙虚」なやり方でもうまくいくのかもしれない。
「努力すれば何とかなる」世界線で生きている人と、「どうにか努力を減らす」世界線の人では、そもそも設計思想が違う。
頑張り屋さんとの仕事が難しいのは、価値観の前提が違うからなのだろう。
私には絶対できない努力の仕方がある。逆に、私のやり方はときどき「すげえ」となるらしい。
世界は「頑張る人」と「工夫する人」で回っている。どちらが欠けても、たぶんうまく回らない。うまく噛み合えば、それがチームになる。
それぞれの得意を生かして、うまいこと共存していけるといい。
へなちょこなことにも、誇りを持とう。自分のダメさ具合に凹むことがあっても、へなちょこだからこそ、工夫しようと思えるのだから。