MENU

しいたけ警察とおかゆ嫌い──嫌いな食べ物語りのおもしろさ|雑記#0049

  • URLをコピーしました!

人の嫌いな食べ物の話を聞くのはおもしろい。

好きな食べ物の話よりも個性があって、いつも気づきがある。

しいたけが大嫌いなある友人は、どんなに細かく刻まれたとしても、かすかな香りからしいたけの存在がわかるという。彼女と食べ物の話をしていると、結構な確率でしいたけの話題になるからおもしろい。

「あの店のラーメン、うっすらしいたけ入ってるから気をつけた方がいいよ」
「〇〇のランチのきのこパスタはしいたけが入ってないからおすすめ」

驚くべき、しいたけグルメマップである。

また別の知人は、しいたけの「ぐにゃ」「しこっ」とした歯触りが生理的に無理、と言っていた。

しいたけが好きなわたしは、しいたけの歯触りの描写の音を考えたこともなかった。そうか〜、「ぐにゃ」「しこっ」かあ〜……!

嫌いな人の視点は、おもしろい。その食べ物が好きな自分には気づきもしなかったような食材の特徴を知っていて、感心の連続だ。

もくじ

愛と憎しみは紙一重

食べ物が好きな理由には割と共通する要素があるから、好きな食べものの話はどちらかというと「共感型」になる。

一方で、食べ物が嫌いになる理由は多くの場合、理不尽で、個人的で、多様である。嫌いだからこその視点は、先読みができなくて、めちゃくちゃおもしろい。

ブロッコリーのモコモコが口の中でほぐれる感じがぞわぞわする、とか。
パクチーの香りが薬用石鹸ミューズみたいで苦手、とか。(気になって調べたら、ほんとに遺伝的に石鹸の香りと感じる人もいるらしい……!参考:日本人の半数以上は遺伝的に苦手だった!?パクチーを石鹸のような風味に感じる原因@DINE

そんなこと考えたことなかったよ〜〜〜!と、手を叩きたくなるような発見があるのだ。

先の“しいたけ警察” の友人に至っては、かすかな香りからしいたけを見出すほどしいたけに注目しているなんて「逆に好きなんじゃないの?」と思ったりもする。まあ、愛と憎しみは紙一重というし、強く関心を持っているという意味では、あらゆる食べ物が大好きなわたしとさして変わらないのかもしれない。

おかゆ嫌いにへこんでいたけれど

お粥研究家としては悲しい事実だが、おかゆは嫌いな食べ物として挙げられることも多い。昔はいちいち凹んでいた。SNSでおかゆに関する投稿をエゴサ(?)しては、傷ついて泣いたりもした。

でも、いつからだろう、たいして傷つかなくなったのだ。

人々のおかゆが嫌いな理由の中に、気づきの種が大量に詰まっている!
おかゆが大好きな者にはわからない、おかゆの特徴や潜在的なイメージ、一般化している誤解が詰まっている!
……と、気づいたのだ。

もしかしたら、おかゆが嫌いという言葉への “傷つき” が “興味深さ” に変わったのは、おかゆへの知識が増えたからかもしれない。知識を活用して、おかゆが嫌いな人の理由に、言い換え・リフレーミングの提案ができるのだ。

「おかゆのべちゃべちゃ感が無理」
→ サラサラの口当たりの茶粥なら好きかも?

「味が単調でつまらない」
→ 味のメリハリがある、あんかけ粥がいいよ!

「おかゆの味がない感じが苦手」
→ 中華粥や韓国粥系の出汁が効いた感じのやつ、好きかもな〜

……といった感じで。

「こういうおかゆならどう?」と提案したときに「えっ!そういうのあるの!それなら食べてみたいかも……!」とわくわくしてもらえる瞬間は、最高にたのしい。

しかも実際にチャレンジしてくれて、しかも「……すっごくおいしかった笑」なーんて感想をもらえたりしたら、もう、有頂天!お粥研究家、冥利に尽きる!しかも、愛と憎しみは紙一重理論で、おかゆ嫌い度が高いように見えた人ほど、ハマってくれたりするからうれしくてたまらない。

あ、でも、嫌いなものを好きにしてやろうみたいなそういう気持ちは全然なくて、単に知らないだけで嫌いになっちゃっている場合がとても多いから、選択肢があることを伝えたくなる感じに近い。

好きと嫌いの温度差が、世界を味わい深くする

あるものへの感想が異なるとき、好きな人は好きな人で、嫌いな人は嫌いな人で、それぞれの価値観が合う世界でやっていくのは、ひとつの正解だと思う。一方で、あるものが好きな人と、嫌いな人が言葉をかわすことで、お互いにとっての気づきが生まれる場面がある、とも思う。

月並みの言葉だけど、みんな違うから、おもしろい!

自分が嫌いなものに対して、ただ嫌いと思考を完了させるのではなく、思い切って嫌いな理由を分析するというのはどうだろう。自分が好きなものが嫌いな人に対して「信じられない!」「〇〇を食べないなんて人生損してる」と、フタをするのではなく、嫌いな理由を聞いてみるのはどうだろう。

人類みな分かり合おう!レッツ議論!……的なたいそうなことではなく、広義の異文化コミュニケーションともいえるおもしろみがあると思う。

おかゆに限らない。あらゆるものに対する、好きと嫌いの温度差は、それぞれの好きを、より味わい深くしてくれる。もしかしたら、世界が“味わい深い”ってことそのものが、好きと嫌いがあるからこそなのかもしれない。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

シェアしていただけるとうれしいです!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

運営者情報

お粥研究家。24時間おかゆのことを考えている人。「食事でじぶんを整える」をテーマに、毎朝の自分の体調に合わせたおかゆを作っている。お粥を作るのも食べるのも見るのも大好き。

もくじ