お粥研究家の鈴木かゆです!お粥に限らず食べ物のことを考えるのがだ〜〜〜い好き!
今回は2022年8月に出演させていただいた、FMノースウェーブ「L2nd(エルセカンド)」さんで2022年8月に放送された『北海道のおいしさ再発見』を記事にまとめました。
北海道の伝統食材や北海道ならではの食文化を通して、北海道の素晴らしさを再発見するこの企画。番組で紹介された3つの伝統野菜、カンロ、サッポロミドリ、八列とうもろこしをご紹介します。
メロンのお姉さん「カンロ」
2022/08/02放送
札幌と旭川のちょうどまんなかに位置する「浦臼町」。
米、野菜、メロン、マンゴー、ワイン用ぶどう、牛肉、エゾシカ肉を中心としたジビエ……おいしいがぎゅ〜っと詰まったこの町で、昔から作られているお野菜が「カンロ」です!
カンロは「北海カンロ/アジウリ/マクワウリ」とも呼ばれる、北海道伝統のお野菜。メロンのような香りとさっぱりとしたお味が特徴で、かつては北海道の夏のおやつの定番だったのだとか。
カンロが「懐かしの夏のおやつ」になってしまった最大の理由は、1962年にプリンスメロンが登場したこと。高級なマスクメロンより安く、カンロより甘いプリンスメロンは瞬く間に大人気に。プリンスメロンの人気におされる形でカンロの生産が減少してしまったそうです。
現在、カンロの旬は7月ごろ。昔はお盆ごろまでたのしまれていましたが、温暖化の影響か収穫期が早まってるそう。さらに、カンロ栽培はメロン並みに難しく伝承が難しいという課題も。
しかし、浦臼町では現在でも10軒以上の農家さんがカンロを生産していらっしゃるのだとか。大人たちには懐かしく、子どもたちにはあたらしい北海道の夏の味。大切にしたいですね。
< 番組でのお話 >
浦臼町産業課商工観光係 内藤賢さん
番組内に登場した「吉見農園」※2022年はお盆までカンロがあるかも?とのことでした
Instagram→ @yoshimi2922
カンロってどんな味?
わたしがいただいた「カンロ」は、お味はさっぱりなメロン、食感はきゅうりとメロンの間、という感じでした!ジューシーさはあるけれどギトギト甘くないから、スイカのように次から次へと食べられちゃう。
甘さが足りないときはお好みで砂糖や蜂蜜をかけて食べてもおいしいよ、と聞いていたのですが、そのままでじゅうぶん甘みがあって、おいしい、おいしい!
ウリの仲間というだけあって、火照った身体の熱がす〜っと取れるような心地がありました。夏のおやつの定番、うん、わかるなあ。
メロンに似ているけれど、メロンとは別物。さっぱりすっきり、この心地がカンロならではなんだろうな〜。
ジューシーな感じがあるので、もしもお粥にしたら「梨粥」っぽい雰囲気になりそうだな〜という予感。(なんでもお粥にこじつけるお粥研究家)
初めていただくわたしにもどこか懐かしくて、おいしくて。いいですねえ、カンロ。ごちそうさまでした!
枝豆界の優等生「サッポロミドリ」
2022/08/09放送
札幌市清田区、天下農園さん。とうもろこし、アスパラ、パッションフルーツ(え、北海道で!?)など30種類ほどの作物とともに作っていらっしゃるのが、サッポロミドリ!サッポロミドリは1974年、約50年ほど前に誕生した札幌発祥の枝豆です。
天下農園さんでサッポロミドリの生産を始めたのは8年ほど前。「札幌黄(たまねぎ)」「札幌大球(キャベツ)」など「札幌」と名のつく伝統野菜を守っていく活動があり、その流れでサッポロミドリの生産を始めたのだとか。
明治時代に開拓使が置かれた札幌では農業技術向上の拠点として、さまざまな作物が開発されたそうです。なるほど〜、「札幌」と名のつくお野菜たちは、札幌の風土や気候に合わせて改良されたお野菜だったのですね。
そんな札幌生まれの枝豆、サッポロミドリの魅力は、実入りの良さと、甘味、それから鮮やかな緑色!7月の下旬から収穫ができる早生の品種であること、産毛が少ないのも特徴。
札幌の風土に合ったとっておきの枝豆!ビールの街、札幌にぴったりだな〜なんて思っちゃいました。笑
< 番組でのお話 >
天下農園 天下かずやさん
詳しい情報は「天下農園」で検索!
天下農園さんのサッポロミドリは、ホクレンショップ(平岡店)や八紘学園直売所で入手できるそうです。
サッポロミドリってどんな味?
塩茹でが一番!……とのことだったのですが、おかゆにしてみちゃいました!
ポイントは、通常の枝豆粥よりも水分を多めにして炊いたところ。以下のレシピでは0.5合のお米に対して700mlの水で作っていますが、0.5合のお米に対して750mlの水で作ってみました。
とろ〜っとした口当たりに、サッポロミドリの濃ゆいお豆の風味が際立つ〜!
お豆のほくっと感も、粒の大きさも、さすが枝豆界の優等生!お味が濃くて、甘くって……と〜ってもおいしゅうございました!ごちそうさまでした。
今はむかし大粒のとうもろこしありけり「八列とうもろこし」
2022/08/16放送
とうもろこしの「列」って数えたことありますか?断面からみたときの、とうもろこしの粒の並びの数です。
現在流通しているとうもろこしのほとんどが20列を超える大所帯。しかしその昔、札幌で愛されていた「八列とうもろこし」という品種のものは、その名の通りたった8列だというのです!
<豆知識>
ちなみにトウモロコシの粒はもともと「雌花」で、2つで1つの花を咲かせるため、粒列は必ず偶数になるのだそうです。(7列とうもろこしや、9列とうもろこしはあり得ない、というわけですね!)
列が少ない分、大粒で、細身の八列とうもろこし。別名、八列とうきび、札幌八行ともよばれるこのとうもろこしは道内で明治初期から昭和初期に最も栽培されてた品種のとうもろこしです。
なんと札幌名物「とうきびワゴン」のとうもろこしも昔は八列とうもろこしだったのだそうですよ!すごい!
人々の食を支えた八列とうもろこしでしたが、昭和40年にスイートコーンが登場すると生産量は一気に減少。甘みの強いとうもろこしがもてはやされたという理由のほかに、スイートコーンは粒にたっぷり水分を含むため、流通させやすいというメリットもありました。八列とうもろこしは水分が少ないため粒が固くなるのが早く、生での流通が難しいなどの課題があったのです。
しかし、八列とうもろこしのしっかりとした穀物の風味は現代のわたしたちがいただいても違いをはっきり感じるほど、スイートコーンとは「別物」。ほんのり甘くてもちもち、焼いて食べるととってもおいしいという八列とうもろこしは、穀物を食べているような旨味が詰まっいて、八列とうもろこしだからこそのおいしさがあるのです。
現在、芽室町で八列とうもろこしを栽培している川合さんも、八列とうもろこしならではの美味しさに惚れ込んで、「この味を残したい!」と栽培を始めたのだとか。流通の難しさも、乾燥させて粒や粉の状態にすることで克服したのだそうです。
「いつものおいしい」も「懐かしいおいしい」もたのしめるって、すごいことですよね。
< 番組でのお話 >
川合農場 川合拓男さん
川合農場のFacebookページはこちら!
『道の駅三笠』では「焼き八列とうもろこし」をいただくことができるそうです。
三笠市HP内 道の駅三笠についての情報はこちら!
八列とうきびってどんな味?
なんと!「八列とうきび粥」が十勝地方の人々の冬の食を支えていたという文献が!
資料を頼りに「乾燥八列とうもろこし」から「八列とうきび粥」をつくってみることにしました。詳しくはのちほどご紹介しまーす!
大粒で、めちゃめちゃ固い!
まとめ
かつては、なるべく効率良くたくさんの人のお腹を満たせる食べ物を追求していくことが「豊かになること」だったのかもしれません。
しかし、人々の努力によって、より安価で、より栄養価が高く、よりおいしさを感じやすい新しい食べ物が次々と登場。お腹いっぱいに食べることが難しくはない時代になりました。
でも、なんとなく「お腹いっぱいだから豊かです!」と手放しには思えないし、だからといって「本当の豊かさは〇〇です!」とも言えなくて。豊かさってなんだろう?と、ずっとふわふわと考えていました。
その答えってほどではないかもしれないけれど、今回、北海道の伝統野菜を通して気づいたのは、「おいしい」に多様性があることはと〜〜〜っても豊か!ということ。
技術を駆使して”究極のおいしい”を追求するのことだけが豊かではなくて、あたらしいおいしい、斬新なおいしい、なつかしいおいしい……いろんなおいしいをたのしめるって、贅沢だし、素敵だし、豊かだな〜と感じました。
たくさんのおいしいに触れて、いろんなおいしいに感動して。感謝の気持ちを抱きつつ、食の冒険をたのしんでいきたいです。
ごちそうさまでした!