ユキノシタ・エノキタケ。この言葉の結びつきにどのくらいの方がピンとくるのでしょうか。
今回は、札幌でちょっぴり食の冒険をしたらおもしろいことを知ったお話です。
※この記事は2022年8月にnoteで書いた記事に加筆修正を加えたものです。
「ユキノシタ」との出会い
海鮮に、お野菜に、小麦に、お米に。何を食べてもおいしい北海道。
あれもおいしい、これもおいしい!とたのしくなったわたしは、未知の北海道食材にもチャレンジしてみることにしました。
「何かおもしろい食材がないかな〜」と八百屋さんをウロウロしていてたら、しいたけ・マッシュルーム・きくらげ……おなじみのきのこに囲まれて、初めてみるきのこに出会いました。
お名前は「ユキノシタ」。
ちっちゃくて、淡い黄色で、華奢で、なんかかわいい!
「ユキノシタは本州にはないかもね〜、味噌汁にすると最高だよ!食感いいし、出汁でるし!」とお店の方。
「おおお〜!すばらしいですね!いただきます!」と即決。
食感が良くてお出汁がでるだなんて……これはお粥にするしかない!(味噌汁にしないんか〜い)
やっぱりおいしいユキノシタ粥
ユキノシタの茎は茶褐色〜オレンジ。傘は黄〜白。
サイズ的には「なめこ」よりちょっと大きいかな〜くらいでしょうか。かわいらしいお姿ですね。
煮込んでもおいしいということだったので、ごま油を絡めたお米とコトコトじっくり煮込んでお粥にしてみました。
完成!ユキノシタ粥!だだーん!
噂通りのいいお出汁がわんさかでてます〜……!風味が強いしめじ、って感じ。
食感はコリコリ!えのきの茎みたいです。
加熱してもこれだけ存在感があるってことは、炊き込みごはんや炒め物にもアリかも!◎
すごいすごい!ユキノシタ!もっともっと魅力を掘り起こしたい、すてきなきのこでした。
ユキノシタの正体は、えのき!?
ユキノシタとの感動的な出会いからほどなくして。
とある本を読んでいるときに衝撃的な事実と遭遇!
エノキタケ(榎茸)というと、細くてひょろひょろと長く、モヤシのような形で束になったきのこと思っている人がほとんどだと思うが、北海道の天然のエノキタケは全く違う形のもので(中略)別名を「ユキノシタ」ともいい
『北海道を味わうー四季折々の「食の王国」』小泉武夫、2022年、中公新書
※太字は鈴木により
えっ
ええっ!?
エノキタケって、あの、えのきぃ?
え、ええ〜〜〜?
「ユキノシタ=天然のえのき」だったの!?
あ、でも……
>「食感はコリコリ!えのきの茎みたいです。」
そう、食感はえのきだったし……
「茶えのき」に似ていなくもないような……茎の色とか!
ユキノシタは天然のえのき説……
うん、たしかに!思い当たる節、あるかも……!
いつもの「えのき」が真っ白ひょろひょろな理由
え〜、うそ〜、と思いながら調べてみると、確かに「ユキノシタ」は「えのき」の野生種。天然のエノキタケでした。
どういうことかというと、一般的なえのきが真っ白なのは、光を当てずに人工栽培されている「えのきの”もやし”」だから、なんですって。
きのこは「菌類」だから光合成をしなくても成長はできます。でも、胞子を遠くにまで飛ばすために光を求める性質は持っているそうで。
だから、光のない場所でも育つけど、光はどこだ〜光はどこだ〜とぐんぐんのっぽになって、あの真っ白な「えのき」の姿となるわけですね。
< その他ユキノシタ&えのきの豆知識 >
・えのきは国内で最も生産量の多いきのこ
・ユキノシタは北海道ではかなりポピュラーなきのこ
・雪の下でも育つほど寒さに強い(なるほど!だからユキノシタ!)
・欧米ではウィンター・マッシュルームと呼ばれている
・ユキノシタは北海道の方言名
・ほか地域によってユキモタセ、ナメラッコ、ナメススキなどの方言名がある
・昭和30年代に長野県で冬の副業としておがくずでのビン栽培がはじまった
・人工栽培でも光を当てて育てると、天然物に近い色になる(=「茶えのき」ですね!)
そうなのね……えのきちゃん………わたしあなたのこと何も知らなかったわ!
まとめ
まさか北海道で出会ったはじめましてのきのこから、いつものきのこを見つめ直すことになるとは思いもしませんでした。
光を浴びて育った「野生のえのき(ユキノシタ)」と、光を当てずに人工的に育てられた「えのき」。
旨味をたっぷりだしてくれるユキノシタもすてきだし、えのきのクセのなさもおいしいし。
それぞれ魅力的で、それがいい!
知ってるようで知らないことってたくさんあるんだな〜食の冒険っておもしろいな〜と思ったのでした。
以上、お粥研究家鈴木かゆがえのき正体にびっくりしたお話でした。
参考:
・『北海道を味わう 四季折々の「食の王国」』小泉 武夫、2022年、中央公論新社
・『NHK出版 からだのための食材大全』池上 文雄 (監修)ほか、2018年、NHK出版
・『おいしいきのこ毒きのこハンディ図鑑』大作晃一・吹春俊光 ・吹春公子 、2016年、主婦の友社
・『キノコの不思議な世界』大海 淳、2022年、大和書房
・エノキタケ Wikipedia
・「違う!天然 エノキタケ 第817回 2006年2月5日 」日本テレビ『所さんの目がテン!』
情報を教えてくださった札幌のみなさん、ありがとうございました!