埼玉県にある「帯津三敬病院」。西洋医学に中国医学や代替療法を取り入れた、全国でも珍しい医療の東西融合を実践する病院です。この病院の設立者であり医院長である帯津良一先生が書いたのがこの本。『美味しい、おかゆ』。
この本のおすすめポイント
- 医師が著者で管理栄養士が料理を担当する、 種類が豊富なレシピ本
ベーシックなおかゆから、病院で実践されている「薬膳がゆ」のレシピまで掲載されている - 読み物としても情報たっぷり
コラムが豊富、使われている食材の健康知識が「身体によいこと」として紹介されている - ひとつひとつのおかゆの写真がとても美しい
食器や敷かれているマットもひとつひとつ違う!見ているだけで癒される
病院食で実践されている「漢方がゆ」
帯津三敬病院では、なんと病院給食で「漢方がゆ」を提供していらっしゃいます。
多くの病院で提供されている「一般食が食べられるようになるための助走としてのおかゆ」ではなく、希望される患者さんの朝食として、漢方がゆを提供しているのだとか。れんこん粥、小豆粥、きくらげがゆ……本書では実際に病院で提供されている「漢方がゆ」も紹介されています。
できる範囲で取り入れてみる
大学の医学部では、たとえば「がん患者さんが食べるべきもの」は教えてはくれないし、巷には食に対しての情報が氾濫している。病院で提供する食事をどうしたらいいものか……と思いを巡らせる著者の帯津先生。そして、行き着いたのが養生のご本家、中国から学んだ「漢方がゆ」でした。
でも、薬膳で使われる特殊な食材を病院食で用意するのは難題ですし、一人一人の身体に合わせたおかゆを用意するのは非現実的です。そこで先生が考えたの方法がすばらしい!
そこでまずは朝食として漢方がゆを日替わりで出すことにしました。あくまでも次善の策です。今日のおかゆは合わなくても明日のおかゆは合うとして、患者さんに期待を繋げてもらうのです。
『美味しい、おかゆ』P.31 病院の漢方がゆについて
「できる範囲でやってみる」。理想通りに取り入れるのは難しいけれど、「ま、それもたのしみになるでしょう」と考える先生の柔軟さは、理想と現実の折り合いのつけ方として大切なキーワードになりそう。おかゆのレシピだけではなく、帯津先生の「やわらかさ」からも、多くのヒントをいただきました。
美味しい、おかゆ。
その題通りの、たくさんの美味しそうなおかゆのレシピと、医学的な視点から語られるおかゆの魅力。調理のコツもふんだんに紹介された充実の一冊です。
自分の身体に合ったおかゆをつくってみたい!と思い立ったとき、まずはじめの一冊として手に取ってみてはいかがでしょうか。
書籍情報
『新装版 美味しい、おかゆ』(著)帯津良一、(料理)検見﨑聡美、河出書房新社、2020年
調理法:お米からつくるおかゆ(炊き粥)
掲載おかゆ数:50以上
(白がゆ、玄米と雑穀のおかゆ:12、野菜やきのこ、豆、乾物のおかゆ:17、肉や魚介類のおかゆ、上等なだしのおかゆ:9、ほか多数)