おかゆ市場がアツい理由 新商品のレトルト粥のライバルは、他社のレトルト粥ではない

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お粥研究家としての活動を初めて3年、お粥業界はますますアツい。

2020年の活動当初はコロナ真っ盛りだったこともあり、自分のSNSへのアクセス数の増加を手放しに喜べなかった。療養食としてのニーズの増加、つまり、コロナの深刻化と連動していると思えたからだ。

一方で、体感として、お粥の人気が高まっている感覚は確実にあった

おかゆの新商品の頻度も、スーパーのレトルト粥コーナーの枠も、明らかに増えている。個人的なことでいえば、コンテンツへのアクセスの伸び率もすごい。お粥研究家という超ニッチなジャンルながら、食っていけるレベルでご依頼をいただく。

コロナ禍を経て、統計の数字が出始めて「あ、やっぱり?コロナ関係なくやっぱニーズ増えてるよね?」と腑に落ちた。

調査会社の富士経済(東京・中央)によると、22年のおかゆ関連商品の市場規模は21年比10%増の96億円となる見込み。2年連続で2桁増となり、コロナ前の19年と比べても22%増となった。

日経MJ 2023年3月15日「おかゆ市場、コロナ前比2割増」より

統計的にもコロナ前と比較して市場規模が大きくなっているのだ。

今回はレトルト粥に着目して、近年の傾向について考えてみる。

もくじ

おかゆのライバルはおかゆではない

はじめに結論から言ってしまうと、現在のお粥レトルト市場では、多くの場面で新商品のライバルは既存商品ではないと感じている。

真逆の状態として思いつくのは、レトルトカレー市場。レトルトカレーで売上を立てるには、レトルトカレーを買いたい人に「こっちのカレーにしよう!」と選ばれなければならない。レトルトカレー市場は「こんなレトルトカレーもあるのか!」という豊かさ頂点はとっくに迎え、商品同士の生存競争が発生している。レトルトカレーの新商品のライバルは、レトルトカレーの既存商品であり、新しいニーズを掘り起こすようなレトルトカレーの登場頻度は非常に落ちているという印象を受ける。

一方、おかゆのレトルトは、既存商品をライバルにせずとも獲得できるニーズの掘り起こしが行われている段階である

「どのおかゆにしようかな」と一定のお粥ニーズの取り合いが発生するに至っておらず、むしろ「スープの代わりにお粥にしようかな」「カップ麺を食べていたけれどお粥にしようかな」と、他のジャンルと比較されてお粥が選ばれる現象が起きている。

これは、SNSの投稿や、実店舗での買い物客の動きを見ていても明らかである。お粥レトルトを買う時に「比較」されているのは「おかゆ」と「おかゆ」ではなくて、あるときは「スムージー」であり、「スープ」であり、「カップ麺」であったりする。

おかゆのライバルは、必ずしもおかゆではない。しかも、新たなニーズがどんどん掘り起こされている。これが私が最もお粥がアツいと思う理由である。

シーンや代替物に着目してレトルト粥を考える

ここで、代表的なお粥を食べるシーンや、おかゆの代替物に着目して現行のレトルト粥を考える。

特別なおかゆ

日常ではない特別なシーン。

1. 療養食のおかゆ(代替物:?)

従来のおかゆのニーズとされるもの。

若干馬鹿にされた文脈で語られることも多い療養食ジャンルのおかゆだが、お粥以外の療養食商品がパッと浮かばない点において、今後もレトルトの療養食としてのニーズは非常に大きなものがある

一方で、圧倒的ニーズを獲得している、味の素の「味の素KKおかゆシリーズ」があるため、レトルト粥の中では唯一レッドオーシャンであると感じる。

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価格帯は100円〜200円程度。素材へのこだわりなどのストーリーがついて、300円程度がMAXか。

2. 非常食のおかゆ(代替物:非常用ご飯、カンパン、非常用菓子等)

非常食としてのお粥も非常に優秀である。

これまでの非常食の定番とされていたものは、パサパサしていて口の中の水分を奪う系のもの(カンパン、非常用菓子など)が多かった。その点、お粥であれば食事として水分補給も同時にできる。また、水を入れるなどの簡易調理も不要。水分が貴重である災害時において、非常に魅力的だ。

水分も摂取できること、体調を問わないこと、年齢を問わないこと。これらの要素から非常食としてのおかゆは今後さらに注目されていくだろう。

最も素晴らしいのは、はくばくの「もち麦ポタージュ粥」。この商品は災害食としての賞も受賞した一品。

ローリングストックのニーズに対応し、しっかりおいしい(塩分も味の濃さもほぼ「スープ」!)であることが大きい。その点では「日常食のおかゆ」に括られるのかもしれないが、価格や販促方法から、あくまでもジャンルとしては災害食にポジションを置いているように感じる。

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非常食特有のニーズとして、日持ちの他に「温めなくてもおいしいこと」が求められる。

価格帯は300〜500円程度。災害食は品質や日持ちが優先されるため、高めの単価が許容されること、定期的な購入が見込まれる点が魅力である。

3. 贈答品・お土産・ふるさと納税の返礼品としてのおかゆ(代替物:食品贈答品)

年配の方や産後、快気祝いなど、身体を気遣う方への贈答品としてのニーズもおかゆが応えることができる。

贈答品用としてのお粥の特徴は、良質さが求められることと、包装がきれいであること。箱に入っているものが多い。

例えば、ホテルオークラの粥の詰め合わせは非常にわかりやすい。

ホテルオークラの詰め合わせセットの画像

「だいたい3000円くらいで」「体に良いものを」「目上の方にも映えるもので(オークラブランド&まじめなパッケージ!)」と、探している人にビンゴ!

他にも、崎陽軒の「シウマイ・中華粥詰合せ」も箱入り。

料亭・名店などの「安定の知名度」、出汁・食材など「こだわってる感」など、ブランドの高め方は多様。

また「ふるさと納税の返礼品」としてのニーズも非常に高まっている。

米・水・塩・具材と、地場のものと絡ませやすいうえ、先の災害食や保存食としてのお粥のニーズの高まりから「買うのはアレだけど、とりあえずもらっとくか」となりやすいのかもしれない。

ホタテ粥、カニ粥、ナマコ粥など、高級食材と絡ませて「お土産」としても。

現状、単価400〜800円程度がメインだが、ブランディング次第では単価1000円以上も不可能ではないと感じている領域。

日常食としてのおかゆ

ざっくりと「日常食としてのおかゆ」を目指している商品が多いが、基本的に人の食事は3食。日常に入り込むには何らかのジャンルから枠を拝借する必要があると感じている。

1. 美容食・ダイエット食としてのおかゆ(代替物:スムージー、ダイエット食全般)

非常にニーズが高い。

ボリューム対して非常にローカロリーなお粥は、美容・ダイエット食としても優等生。糖質制限ダイエットなど一定の相容れないジャンルはあるものの、そもそものヘルシーなイメージは大きな強みである。

味の多様性が出しやすいこと、具材次第で食物繊維・タンパク質などニーズの高い栄養素を添加しやすいのも魅力。

キーワードとして、薬膳、温活、腸活、ファスティング(断食)の回復食など。

ライバルとなる商品(スムージーやダイエットクッキー、おきかえ食品)は大手企業が広告をガンガン投入しているジャンルなので、ある程度の規模感やブランディング力が求められるが、単価の高さへの許容もあり、投資した分だけ一定のニーズを獲得しやすいジャンル。

「おいしい」だけだと難しい。医師の監修や、美容家、薬膳の専門家、栄養系の資格者などの監修をつけるなど、信用保証の工夫が必要。

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2. 健康食としてのおかゆ(代替物:スープ、ごはん、外食)

そもそも健康志向が強い方は自炊率が高いため爆発的なニーズはない気もしてしまうが安定感のあるジャンル

先の「美容食・ダイエット食としてのおかゆ」との重なりも大きい一方で、おかゆならではの魅力である「ナチュラル感」「ゆるさ」が引き立つのはやはり健康食ゾーン。

スープのように体を温めて、スープより腹持ちが良い。ごはんと同じく米料理だが、よりヘルシー。ストーリー次第で展開がしやすい。また、『粥有十利』という粥のメリットを10個あげた道元さんの言葉を根拠にするなど、監修を置けない程度の規模感でも展開しやすい。

食材にこだわることで、原材料を気にする層の方の「自炊ができないときの食事」ニーズに対応できる。

キーワードとして、薬膳、自然食、素材、アーユルヴェーダ、菜食、ファスティング(断食)の回復食など。

ちなみに、薬膳(中国の伝統医学「中医学」に基づいた食事)との相性は抜群だが、薬膳系粥はニーズに対して若干飽和状態に近いように見受けられる。

薬膳界はシマというか繋がりの世界が強そうなので、ファンの多い監修の方をつけたり、特定の協会などとコラボする必要があるのだと思う。

現状では安定したジャンルと感じつつも、1つでも特定保健用食品の粥(「おなかの調子をととのえる」粥)が出てきたりすると、その他の商品の地位が激変したりするのだろうな〜とは感じている。

3. 簡易な食事としてのおかゆ(代替物:カップ麺、ジャンクフード、お惣菜)

お粥界に激震。味の素「粥粥好日」が切り開こうとしているジャンル!

Z世代がターゲットという点ばかりが話題になっているが、個人的には「ライバルをカップ麺的なジャンクフードに置いた点」が革命的

味付けの濃さ、カップ仕様、別添えの調味料。カップ麺的!

粥粥好日の写真

正直「おかゆ」として食べると、あまりの味の濃さに「ちょ、ちょ、ちょ」と思うくらいに、バッチリ旨い系に仕上がっていて面食らう。

一方で、比較対象が「カップ麺(しかもグルメ系)」と思うと、このくらいの味の濃さが必要であることに納得する。単価も300円以上でも納得。

さまざまなメーカーから「カップ粥」が出ているが、これらの商品は「簡易な食事」としての枠を目指していると思われる。

なんといっても、フタを開けてそのままレンジで加熱できる便利さは、パウチの粥よりも何倍もラク!

紀ノ国屋 干貝柱粥を温めている画像

一食が単品で完結するような、具沢山感や、しっかりとした味付けがトレンド。

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今後の展開としては、ターゲット若めを狙うなら、粥粥好日さんも打ち出した世界各国の粥商品は出せば売れるのだろうと感じる。「海外旅行で食べてお粥を好きになった!」というニーズは一定数ある。韓国粥、タイのジョーク、インドのキチュリなど。

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個人的には、高齢の方々の簡単な食事としてのニーズが狙い目だと感じている。白粥やたまご粥など、クラシカルなカップ粥の商品は、価格的にパウチの商品と比較されるとどうしても高くは感じてしまうためか少数派。

しかし「ちょっとでいいの、でも、ちゃんとしたものがいいの」という高齢の方の食事ニーズは確実に高まっている。お惣菜やコンビニで食事を済ます高齢の方も増えていると聞く。薄味&良質なカップ粥はブランディングや販促方法の工夫で、非常に可能性のあるジャンルだと思う。

4. 毎日の習慣としてのおかゆ(代替物:朝ごはん、昼ごはん、晩ごはん)

かなり難しい領域。

(私を含め)毎朝習慣としておかゆを食べている方はたしかにいるし、新習慣としておかゆを始める方もいないわけではない。

しかし、正直、現状では大きなニーズを獲得するのは難しいと感じている

なぜなら、今おかゆを習慣とする人が少ない理由が、レトルト粥が煩雑で、まずくて、高いわけではないからだ。ラクなレトルト粥も、おいしいレトルト粥も、安いレトルト粥も、存在はしている。

もっというと、レトルト粥のアレンジレシピは各社めちゃ頑張っているし、コンビニですらすでにお粥は棚に並んでいる。

つまり、ハード面(モノ)の問題ではなくて、ソフト面(マインド)の問題なのだ。

「新習慣としてのレトルト粥」などと標榜する商品はときどき出てくるが、そもそも人様の食生活を変えることはとんでもなく難しい。

現状では(私が言ってしまうのもアレだが)ときどき食べててもらう選択肢になることを目指す路線が現実路線だろう。

ちなみに、私が発信しているのは、まさにこの「習慣としての朝粥」。が、そもそも私はおかゆが大好きで、毎朝のお粥を作って食べてSNSで発信をするのがたのしくてたのしくてやっている。人々の食生活を変えたいから・儲かるから・儲かりそうだから、ではない。

一方で、おかゆはあるタイミングでどっと来るとは思っている。

超人気芸能人が「お粥生活万歳!」と言い出すとか、ある商品が突然バズるとか。(運!)

ごはん、パン、シリアル、スムージー……多様化する食生活のなかで、おかゆがイチジャンルを築くポテンシャルは十分にあることはお粥研究家的にも確信はしている。(ただし、運!)

ムーブメントや人々の嗜好はそう簡単に操作できるものではないので、じわじわ→ドカン、に投資するという視点であるなら有望株。

一例として、味の素の「味の素KKおかゆシリーズ」から、16年ぶりに新商品登場された「鶏がゆ」は、あるタイミングでどっと来る、を見越した商品だと感じている。

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まとめ

以上、お粥研究家的視点で、レトルト粥の現状と今後のニーズを考察した。

はじめにも書いた通り、新商品のレトルト粥のライバルは、必ずしも他社のレトルト粥ではない。

「おかゆの概念を変える!」と標榜する商品の乱発から、最近は特定のニーズを狙った商品が増えている。(ご依頼も「おかゆの概念を変えるような!!!」というものから「〇〇向けのおかゆの〜」といただくことが格段に増えている)

お粥研究家として、いちおかゆファンとして、お粥が多様化するのはほんとうにうれしいことだし、レトルト粥にはこれまでおかゆを食べていなかった人をおかゆ界に引きずり込む(?)大きな力を感じている。

みんなちがって、それぞれよい。これからどんな商品が出てくるか、たのしみです!

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運営者情報

鈴木かゆのアバター 鈴木かゆ お粥研究家

お粥研究家。24時間おかゆのことを考えている人。「食事でじぶんを整える」をテーマに、毎朝の自分の体調に合わせたおかゆを作っている。お粥を作るのも食べるのも見るのも大好き。

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